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求め続けるもの(19) [長編]

「陛下に御子の事を話そうか迷いましたが

わたくしは出来ませんでした。

しばらく離れて落ち着いた頃に帰ってきて

頂けたらと思っておりました。

まさかこのような事になるなんて・・・」

ハディは言葉を詰まらせ泣き崩れた。

ハディは責められない。

すべては自分がした事。

結局ユーリを追い詰めたのは自分なのだ。

カイルはそう思った。

「陛下、どうかわたくしをアリンナに行かせて下さい。

ユーリ様が現れた時不安な思いをなさるかもしれません。

決して逃亡など考えておりません。どうかお願いいたします」


「ユーリを頼む」

「命かえましても!」


あの状況では楽観は出来ない。

見かけより赤い河は流れが激しい。

生きているとは・・・思えない。



「陛下、気休めかもしれませんが

天が遣わせしユーリ様がこのような事で

失われるとは思いません」


「そうであると願っている」

カイルは心からそう思った。





―赤い河の源流近く―

「この娘、肌は象牙色だ」

「俺もこんな娘は初めて見たぞ」


気を失い河に身を任せているユーリを

目の当たりにした民は数人がかりで地上へと引き上げた。


「死んでいるのか?」

胸の辺りに耳を押し当て確かめる。

「かなり弱ってるが生きてる」

「将軍に報告せねば・・・」

「女好きの将軍にか?」

「我々の待遇を良くして頂く機会やもしれぬ」


そんな会話も聴こえてこないほどユーリの意識は

深く沈んでいた。




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