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求め続けるもの(20) [長編]

「将軍、村の者が謙譲したきものがあると

申しておりますが」

「たわごとを聞くほど俺は暇ではない。適当にあしらえ」

ラムセスの返答にすばやく行動するわけでもなく

ワセトは続けた。

「必ずや満足いただけるものだと申しております」

「たいそうな言いようだな。おまえはそれを見たのか?」

「いいえ。直接将軍にと」

「俺に満足という言葉はあてはまらん。が、そこまで言うのなら

面倒だが会ってやろう」

ラムセスは不敵な笑みを浮かべた。

退屈しのぎにはなるかもしれない。

こんな偏狭に追いやられ少々退屈であったのは事実だ。

心の奥の不完全燃焼のままのものが

引っかかっていた。



「俺に何を見せたいと?」

ラムセスは傲慢そうに椅子に座して訊いた。

「ご多忙の仲ありがたき幸せにございます」

「能書きはいい。つまらぬものなら許さぬぞ!」

「ははっ!!」

村人たちは怯えたように平伏した。

「これにございます」


丁重に運んでくるものにラムセスは息を呑んだ。



ユーリ・・・・。

思わず出そうになった言葉を何とか堪えた。

「将軍・・・」

ワセトも気づいたようだった。


「これは・・・?」

冷静を装い尋ねた。


「赤い河のほとりにて捕らえしものにございます」

「それでおまえたちの望みは?」

「畏れながら我らの待遇の向上を賜りたく」

「よかろう」

「お気に召していただきありがたき幸せにございます」


貢物をラムセスは自ら壊れ物を触れるように抱き上げた。



何故、ユーリが?

それは本人の口から聴けるであろうとこの時ラムセスは思っていた。


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