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求め続けるもの(11) [長編]

―夕刻―

暗がりで聞こえる三人の女の声。

「姉さん、このままじゃ動けないわ」

「わかってるわ。でもすぐ動くのは危険すぎる」

「ユーリ様のお体も・・・」

「しっ!」

ハディはリュイの言葉を制し辺りを見渡す。

「皇帝陛下なら何をおいても隊商に馬を走らせるはずなのに。

不自然だわ。気づかれてるのかも?」

「それだけじゃないわ。

時間が長引けば皇太后陛下のお耳にも入る可能性も

出てくるし」

「でも約束は数日だしどんな事があろうと

父が守ってくれるはずよ」



三人の会話を盗み聞く人物が一人。

「父?ではユーリはアリンナのタロスの所か?」

他ならぬカイルだった。

『今すぐにでもアリンナに飛んで行きたいが

それをユーリが好まぬならそれも出来ぬ。

追及しても無駄だろう』



―夜半―


「ハディ、リュイ、シャラ」

カイルは三人をユーリの部屋に呼んだ。


「姉さん・・・」

リュイとシャラは少し怯えたように言った。

ハディは黙って頷く。


「陛下、お呼びでしょうか?」

三人は動揺を悟られないように努めた。


「・・・・ユーリはどうして居なくなったと思う?」

「先日も申し上げたようにわたくしどもにも皆目

見当がつきません」

「では想像で構わぬ。申せ」

「・・・・・」

『陛下はもしやお気づきなのでは?』

「男のわたしより女のそなた達の方がわかるのではないか?」

その瞬間、明らかに三人は青ざめた。


無論、カイルもそれに気づいた。


「陛下、お尋ねしたい事がございます」

カイルは出来る限り冷静に答えた。


「よかろう」



「ありがとうございます。恐れながら・・・」

ハディは意を決したように話し始めた。


「陛下はユーリ様の事をいかように

思われていらっしゃいますか?」


「誰よりも愛しいと思っている」

それは嘘偽りの無い真実。


「陛下は先ほど同じ女であるならユーリ様の気持ちが

分かるのではとおっしゃいました。ユーリ様が陛下と

共に歩むと言う事がいかに大変な事かとご承知でしょうか?」


「それはユーリに無理な事を強いると言いたいのか?」

カイルの表情が少し厳しくなる。

「ご無礼は充分承知しております」

「わたしはすべてを含めて共に歩んで生きたいと

思っている。それが如何に困難な事であるかもわかっている。

だがそれに似合ういやそれ以上の気持ちで心で応えていく。

そう考えている」


「わかりました・・・」

「姉さん・・・」

止めるようにリュイとシャラが言った。


「差し出がましい事を申しました。ユーリ様はアリンナの父の元に

おります。理由はご本人にお聞きくださいませ」

「よくぞ話してくれた」
























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